所長ブログ

どこもかしこも真紅の炎

夢ではなかった。

トタン屋根をゆすぶる突風のうなりの中に、ドカドカと大地をふるわせる不気味な怪音と
天地をふるわせる不気味な怪音と、炸裂音がひっきりなしにひびき、
枕もとの非常袋その他をとっさにつかんで、玄関先に飛び出せば、視界は赤一色。
首を一回転させてみた。

どこもかしこも、ごうごうと真紅の炎が闇空を焦がし、
耳をつんざくような爆発音が断続的にひびく。
とたんに、頭上の空気が鋭く裂けた。

ヒュルヒュルと鼓膜を震わせて、
ゴーっと迫ってくるのは、至近弾だ。
爆弾か焼夷弾か。
空襲警報もならないうちに、一体どうなったのか。

ほんの一眠りしている間に火は地の底からふき出してきたように、私たちを包囲してしまった。
北風はこれみよがしに荒れ狂い、ごみ箱の蓋は木の葉みたいに舞い上がり、電線はムチのようにしなり、
空に吸い込まれる炎は巨大な何本もの赤旗の幟のように、ひるがえって鳴っている。

「勝間(かつげん)!何グズグズしてるの!早く!」
2階からかけおりてきた母が叫んだ。
とっさに我に返った私は、
「か、かあちゃん!おれの防空頭巾は?」
「かぶっているじゃないか!さ、荷物を早く早く!!」

「え?」
「に、逃げるんだよ」

 『東京が燃えた日―戦争と中学生』(岩波ジュニア新書 99~100ページより)

昔、昔 77年前の昭和20年3月10日『東京大空襲』の様子を見事に表現された本の一部です。
このようなことが、今実際に起こっている事は胸が締め付けられる思いです。

今日も健康で無事でいられることが事が何と大切な事かと思うと同時に
戦争が一日も早く終わる事を祈るばかりです。

今日の日も明るい心でコロナに負けない一日でありますよう。

湘南話し方センター
所長 松永洋忠

関連記事